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藪内 聖皓*; 鈴土 知明
Journal of Nuclear Materials, 574, p.154161_1 - 154161_6, 2023/02
被引用回数:0 パーセンタイル:0.01(Materials Science, Multidisciplinary)原子炉材料において照射欠陥は機械的特性の劣化を引き起こす。これらの材料では、転位とボイドとの関係が機械的強度に特に重要である。これまで球状のボイドのみが研究されてきたが、本研究では球状ボイドと同時に観測されるファセット型ボイドに注目した。よって本研究では、純鉄の照射硬化におけるファセット型ボイドの効果を明らかにするために、分子動力学法を用いて解析した。具体的には、球状ボイドとファセット型ボイドの障害物強度と相互作用過程の違いや、ファセット型ボイドでも転位との結晶学的な配置関係によって相互作用に違いが出ることを明らかにした。
矢野 康英; 上羽 智之; 丹野 敬嗣; 吉武 庸光; 大塚 智史; 皆藤 威二
Journal of Nuclear Science and Technology, 9 Pages, 2023/00
被引用回数:1 パーセンタイル:72.91(Nuclear Science & Technology)高速実験炉「常陽」で中性子照射したPNC316の引張特性に及ぼす中性子の影響を評価した。PNC316被覆管とラッパ管は、照射温度400ら735Cで照射量21から125dpaで照射された。照射後の引張試験は室温と照射温度で実施された。照射材の著しい硬化と軟化は確認されたが、照射後の引張延性は工学的なレベルを維持できていた。また、400から500Cの範囲で110dpa照射されたPNC316ラッパ管の最大スエリング量は2.5%であり、10%以上のスエリングが生じたPNC316や15Cr-20Ni鋼のような日本の20%冷間加工材は、塑性不安定は小さかったけれども、十分な延性と加工硬化性能を維持していることが分かった。
矢野 康英; 丹野 敬嗣; 大塚 智史; 皆藤 威二; 鵜飼 重治*
Materials Transactions, 62(8), p.1239 - 1246, 2021/08
被引用回数:5 パーセンタイル:41.35(Materials Science, Multidisciplinary)FeCrAl-ODS鋼被覆管を製作し、その被覆管の熱時効の影響を調査するために、450C,5000時間と15000時間の熱時効後に、硬さ試験,リング引張試験,TEM観察を実施した。全てのFeCrAl鋼被覆管で熱時効硬化が確認され、延性低下を伴う顕著な強度上昇も生じた。熱時効硬化挙動は(Ti, Al)リッチ相('相)析出とAl7wt%未満の場合は'相析出も起因していると考えられる。同様の組成をもつFeCrAl-ODS鋼を比較した場合、再結晶材と未再結晶材で熱時効硬化は生じるが、後者は延性低下を伴わないことが明らかになった。この挙動の差は、結晶粒界,転位密度,試験片作製方向の影響が起因していると考えられる。本研究は、文部科学省の原子力システム研究開発事業による委託業務として、北海道大学が実施した平成2528年度「事故時高温条件での燃料健全性確保のためのODSフェライト鋼燃料被覆管の研究開発」の中で北海道大学からの委託により原子力機構が実施した研究成果である。
三原 守弘; 原澤 修一*; 鳥居 和之*
原子力バックエンド研究(CD-ROM), 26(1), p.15 - 23, 2019/06
鉱物質混和材(フライアッシュ:FA, 高炉スラグ微粉末:BFS, シリカフューム:SF)を用いた水セメント比50%および30%の材齢28日のセメントペースト硬化体を作製し、CsおよびIの見掛けの拡散係数(D)を、電子線プローブマイクロアナライザーを用いた方法により算定した。Csについては、水セメント比50%ではBFS、水セメント比30%ではSFの使用がDの低減に大きく寄与した。IのDの低減には、水セメント比50%ではBFS、水セメント比30%についてはその大きな変化は確認できなかった。SFを用いることによりCsの収着性の向上が見られ、BFSを用いることによりIの収着性が向上する傾向が確認された。これらのセメントペースト硬化体の間隙構造は、微細な間隙によって連結したものであることも確認され、SFおよびBFSの使用がDの低減に寄与したものと考えられた。
瀬野 康弘*; 中山 雅; 杉田 裕; 棚井 憲治; 藤田 朝雄
JAEA-Data/Code 2016-011, 164 Pages, 2016/11
地下300m以深への地層処分が定められている高レベル放射性廃棄物(HLW)の処分場の坑道などの支保工にはコンクリートの使用が想定されている。一般に、OPCを用いたコンクリートの浸出水のpHは1213を呈する。一方、緩衝材に用いられているベントナイトはpH約11以上の高アルカリ環境で変質し膨潤性能が低下する恐れがあり、これらのバリア機能が阻害される可能性が指摘されている。したがって、HLW処分場の支保工に使用されるセメント系材料にはバリア機能は求められていないものの、他のバリア機能を阻害しないこと、すなわち、低アルカリ性が求められている。原子力機構では、セメント系材料の低アルカリ化を目指し、コンクリートの浸出水のpHを11程度以下にすることを目標とし、OPCにシリカフュームとフライアッシュを混合させた低アルカリ性セメント(HFSC)を開発した。HFSCのHLW処分場用支保工材料への適用性に関する研究は、幌延深地層研究センターの深度140m, 250mおよび350mの水平坑道において施工を行い適用の目途を得ている。本資料は、HFSCのこれまでに実施した種々の配合試験で得られたHFSCコンクリートのフレッシュ性状や硬化物性値等について整理した。
大岡 誠; 前川 康成; 富塚 千昭; 村上 知行*; 片桐 源一*; 尾崎 博*; 河村 弘
JAEA-Technology 2015-003, 31 Pages, 2015/03
東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に向けた取組みが現在すすめられている。燃料デブリ取り出しのために、格納容器内を水で満たす必要があるが、いくつかの号機では冷却水の漏えいが存在し、漏えいを止めることが最重要課題になっている。福島廃炉技術安全研究所では光硬化樹脂を用いた止水方法を検討している。紫外線照射によって硬化する材料(光硬化型樹脂)を冷却水に混ぜ格納容器の損傷部に到達させ、漏えい箇所出口にて紫外線を照射して光硬化型樹脂を硬化させ損傷部を閉塞するものである。しかしながら光硬化型樹脂は元々コーティング、または塗装剤として使用されるものであり、漏えい止水への適用性は未知である。本稿は、光硬化型樹脂の水中での基本的な硬化性能を把握し、漏えい止水への適用性を検討した結果を報告するものである。
Xiong, Z.; 直江 崇; Wan, T.; 二川 正敏; 前川 克廣*
Procedia Engineering, 101, p.552 - 560, 2015/03
被引用回数:1 パーセンタイル:62.19(Engineering, Multidisciplinary)核破砕中性子源の構造材料として用いられるオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lの超高サイクル疲労挙動について、ひずみ速度10sの超音波疲労試験により調べた。超高サイクルの繰返し応力負荷に伴う硬化及び軟化を調べるために、溶体化処理材及び冷間圧延材に対して、疲労試験後の試験片断面の硬度分布、引張り試験による残強度測定、非線形超音波による転位密度変化の計測を実施した。その結果、溶体化処理材では、10回以上の超高サイクル領域で繰返し硬化が観測された。冷間圧延材では、10回以下では、繰返し軟化が観測された一方、10回以上では、繰返し硬化が観測された。
直江 崇*; 二川 正敏; 内藤 明*; 粉川 広行; 池田 裕二郎; 本橋 嘉信*
JSME International Journal, Series A, 48(4), p.280 - 285, 2005/10
核破砕中性子源水銀ターゲット容器材料は、核破砕条件による陽子&中性子同時照射と水銀環境に曝される。これらの環境によるターゲット容器材料の劣化を評価するために、核破砕条件を模擬したイオン照射と水銀浸漬実験を容器候補材316ステンレス鋼に対して行い、材料表面層の機械的特性の変化を押し込み試験技術と微細組織観察結果から評価した。押し込み荷重-深さ曲線に逆解析を適用して評価した応力歪み曲線から、核破砕条件下で照射後に水銀浸漬を施すと最大引張り強さまでの延びは、受け入れ材の約1/3程度に低下すると推測された。さらに、キャピテーション壊食低減技術として窒化&浸炭硬化処理を施した表面層は、照射の影響をほとんど受けないことがわかった。微細組織観察から、硬化処理により生じた転位群が照射による発生した転移のシンクとして作用するためと考察できた。
若井 栄一; 實川 資朗; 富田 英樹*; 古谷 一幸; 佐藤 通隆*; 岡 桂一朗*; 田中 典幸*; 高田 文樹; 山本 敏雄*; 加藤 佳明; et al.
Journal of Nuclear Materials, 343(1-3), p.285 - 296, 2005/08
被引用回数:48 パーセンタイル:93.91(Materials Science, Multidisciplinary)低放射化マルテンサイト鋼F82Hの照射硬化と脆化に及ぼすHe生成効果とその生成量依存性を引張試験片(SS-3)と破壊靭性試験片(0.18DCT)を用いて評価した。中性子照射はJMTR炉にて250Cで約2.2dpaまで行った。本研究ではHeを材料中に生成させるためにボロン10を添加した。He生成量を変数にするため、ボロン10とボロン11の配合比(0:1, 1:1, 1:0)を変えて、ボロン添加総量を60mass ppmに揃えた3種類の添加材を作製し、照射前後の特性を比較してボロンの化学的な効果を最小限に抑えた。また、これらの試料での生成He量は約5, 150, 300appmである。一方、ボロンの効果を完全に排除した50MeVのサイクロトロン照射実験も行った。この方法ではボロンを添加しないF82H鋼を用い、直径3mm,厚さ0.3mmのTEM片に約120Cで約85appmのHeを均一に注入した後、スモールパンチ試験によって強度特性を評価した。この弾き出し損傷量は約0.03dpaであった。これらの試験結果から中性子照射後の降伏応力と最大引張応力はHe生成量の増加に伴ってやや増大した。また、中性子照射後の延性脆性遷移温度(DBTT)は40Cから150Cの範囲にあり、He生成量の増加に伴って高温にシフトした。また、サイクロトロンHe照射法によっても同様のHeによるDBTTシフト効果が確認できた。
安堂 正己; 若井 栄一; 沢井 友次; 松川 真吾; 内藤 明*; 實川 資朗; 岡 桂一朗*; 田中 典幸*; 大貫 惣明*
JAERI-Review 2004-025, TIARA Annual Report 2003, p.159 - 161, 2004/11
ブランケット構造材料の候補材料である低放射化フェライト鋼では、照射による靭性の低下(延性脆性遷移温度の上昇)が重要な課題となっている。本研究では、低放射化フェライト鋼F82Hに対して、照射硬化が、靭性の低下と大きな関連を有することに着目し、特にヘリウムによる硬化促進及び高照射量での硬化挙動について、TIARAによる多重ビーム照射を用いて調べた。まずヘリウムがない場合における、照射硬化の照射量依存性を調べた結果、633Kにおいては、30dpaまで硬化は増加する傾向にあるが、それ以上の照射量においては飽和傾向を示すことが明らかとなった。さらに同照射温度にて、ヘリウムが照射硬化の促進に及ぼす影響について、ヘリウム注入比を10/100appmとしてそれぞれ比較した結果、1000appmを超えるとわずかな硬化の促進が見られるが、約3300appm(ヘリウム注入条件100appmHe/dpa)の場合においては、20%程度の硬化量の促進が生じることがわかった。
安堂 正己; 若井 栄一; 沢井 友次; 谷川 博康; 古谷 一幸; 實川 資朗; 竹内 浩; 岡 桂一朗*; 大貫 惣明*; 香山 晃*
Journal of Nuclear Materials, 329-333(2), p.1137 - 1141, 2004/08
被引用回数:50 パーセンタイル:93.84(Materials Science, Multidisciplinary)F82H鋼の開発にあたり、高照射域(100dpa)での照射脆化に及ぼすヘリウムの効果を調べることは、構造材料の寿命を見通すうえで非常に重要である。一般的に照射によって生じる脆化と硬化の間には正の相関関係があることから、損傷により生じる硬化に加え、ヘリウムが存在する場合での硬化の促進作用の有無について把握しておく必要がある。本研究では、イオン照射法を用いて、総ヘリウム量5000appmまでの同時照射実験(Feイオンによる損傷導入+ヘリウム注入)を行い、微小押込み試験により照射後の硬さ変化について調べた。その結果、約500appmのヘリウム量では、硬化量の促進はほとんど認められず、ミクロ組織も損傷のみの場合と同様の組織が観察された。このことから500appmまでのヘリウム同時照射は、照射硬化の促進には寄与しないことがわかった。
谷川 博康; 橋本 直幸*; 酒瀬川 英雄*; Klueh, R. L.*; Sokolov, M. A.*; 芝 清之; 實川 資朗; 香山 晃*
Journal of Nuclear Materials, 329-333(1), p.283 - 288, 2004/08
被引用回数:19 パーセンタイル:75.21(Materials Science, Multidisciplinary)低放射化フェライト鋼は、核融合炉ブランケット構造材料の候補材料である。これまでの研究により、300C5dpaの中性子照射による鋼の延性脆性遷移温度がF82H(Fe-8Cr-2W-V-Ta)に比べて、ORNL9Cr-2WVTa及びJLF-1(Fe-9Cr-2W-V-Ta-N)が小さいことが明らかになっている。これらの違いは、照射硬化の影響のみでは説明することができない。また一方、Cr量の違いとして解釈できるものでもない。本研究では、これらの鋼の衝撃特性変化の違いについて、その要因を探るべく、微細組織解析を行った、その結果について報告している。
若井 栄一; 田口 富嗣; 山本 敏雄*; 加藤 佳明; 高田 文樹
Materials Transactions, 45(8), p.2638 - 2640, 2004/08
被引用回数:1 パーセンタイル:12.44(Materials Science, Multidisciplinary)核融合炉構造材料の第一候補材料である低放射化フェライト鋼の照射硬化に及ぼす熱遍歴効果を調べた。本研究ではF82H鋼を用いて、焼きならしを1040Cで30分行った後、焼きもどしの温度と時間を変数にして、照射前後の引張り特性変化を調べた。焼きもどしの条件は750C, 780C, 800Cの各温度で30分の熱処理した場合と750Cで30分から10時間まで変化させた場合の試料を用意した。照射はJMTR炉で約250Cにて1.9dpaまで照射した。引張試験にはSS-3タイプの微小試験片を用いて室温から400Cまで試験した。また、照射前の微細組織をTEM観察した。その結果、この低照射量域での照射硬化の変化は焼きもどしの温度の低下とその時間の短縮に伴って減少する傾向にあることがわかった。また、この照射硬化量の低下の原因は焼きもどしの温度と時間によって変化する固溶炭素濃度の低下によって生じる欠陥クラスター形成の減少と転位密度の増加による欠陥クラスターの成長速度の低下によると考えられる。
若井 栄一; 松川 真吾; 山本 敏雄*; 加藤 佳明; 高田 文樹; 杉本 昌義; 實川 資朗
Materials Transactions, 45(8), p.2641 - 2643, 2004/08
被引用回数:6 パーセンタイル:41.12(Materials Science, Multidisciplinary)JMTR炉で300C, 2.3dpaまで中性子照射したF82H鋼の引張り特性に関する破断と硬化の挙動に及ぼすHeの効果を調べた。本研究では材料中にHeを生成させるためにアイソトープ調整したボロンを添加させ、中性子照射中にHe量を約5から330appmまで発生させた。照射後、室温にて引張り試験を行い、破断面をSEMで観察した。その結果、He生成量の増加に伴って硬化量がやや増加したが、絞りは減少傾向にあった。この絞りと破断時の強度から近似的に算出した破断応力は材料中に生成したHe量の増加に伴って減少することがわかった。他方、ボロンと窒素を微量添加したF82H鋼(Fe-8Cr-2W-0.1C-0.3V-0.04Ta)の引張り特性とシャルピー衝撃特性の試験片サイズ効果を調べた。引張り試験には標準的サイズのJIS 14A(平行部径6mm,平行部長さ33mm)と小型サイズのSS-J3(平行部1.2mm0.77mm,平行部長さ5mm)を用い、シャルピー衝撃試験には標準の1/2t-CVNと小型の1/2t-1/3CVNを用いて評価した。その結果、引張り特性に関しては試験片の小型化による影響はほとんどなかったが、衝撃特性では試験片の小型化によって、破断面の単位面積あたりの吸収エネルギーが低下しただけでなく、DBTT(延性脆性遷移温度)が約12C低下することがわかった。
シュラウド・再循環系配管サンプル調査チーム
JAERI-Tech 2004-049, 44 Pages, 2004/06
柏崎刈羽原子力発電所1号機において、原子炉再循環系配管の溶接継手部にひび割れ(以下、き裂)が確認された。本調査は、東京電力(株)が日本核燃料開発(株)にて実施するき裂を含む材料サンプルの調査・評価に関して、原研が第三者機関として調査計画の策定段階から加わり、調査中に随時試験データの評価や試験現場への立会を実施し、最終的に得られた調査データを入手し原研独自の調査報告書を作成することにより、調査の透明性を確保することを目的として実施した。本調査により、以下のことが明らかとなった。(1)き裂は、管内表面の溶接部近傍に発生しており、深さは7mm程度であった。(2)き裂部破面のほぼ全体が粒界割れであった。(3)管内表面のき裂開口部には深さ100m程度の範囲で粒内割れを含む部分があり、その部分には加工により形成された金属組織及び硬さの上昇が見られ、き裂は硬さの最も高い部分の付近で発生していた。(4)き裂近傍の結晶粒界近傍においてごくわずかにCr濃度が低下していた。本調査の結果と、溶接によりき裂部付近で発生したと考えられる引張残留応力及び炉水中の溶存酸素濃度等を考慮すると、このき裂は応力腐食割れ(SCC)であり、材料の硬さと関係があると結論される。
二川 正敏; 直江 崇*; 粉川 広行; 石倉 修一*; 伊達 秀文*
材料, 53(3), p.283 - 288, 2004/03
大強度のパルス陽子線が水銀ターゲット中に入射するため、液体水銀内部では急激な発熱反応に伴う熱膨張により、圧力波が生じる。圧力波の伝播過程でキャビテーション壊食による損傷が懸念され、固体金属容器の寿命を決定する重要な因子となる。これまでに種々の材料に対してSplit-Hopkinson-Pressure-Bar(SHPB)衝撃原理に基づいた平面ひずみ波入射実験装置を用いて、固体/液体界面に衝撃圧力を負荷する実験を行い、損傷評価基礎実験を行った。これより、マイクロピット群の形成による衝撃壊食損傷の程度が、材料の硬度と明瞭な相関があることを見いだした。そこで、本報では、ターゲット容器内壁に処理可能な各種表面硬化処理により損傷の低減化を試み、その可能性について検討した。
シュラウド・再循環系配管サンプル調査チーム
JAERI-Tech 2004-002, 58 Pages, 2004/02
柏崎刈羽原子力発電所3号機において、シュラウド下部胴とシュラウドサポートリングの内側溶接部(H7a内側)近傍のシュラウドサポートリングにひび割れ(以下、き裂)が確認された。本調査は、東京電力(株)が日本核燃料開発(株)にて実施するき裂を含む材料サンプルの調査・評価に関して、原研が第三者機関として調査計画の段階から加わり、最終的に得られたデータを入手し、原研独自の調査報告書を作成することにより、調査の透明性を確保することを目的として実施した。本調査により、以下のことが明らかとなった。(1)ボートサンプルの表面においてグラインダー加工痕と機械加工痕が見られた。(2)き裂部の破面は、ほぼ全体が粒界割れであった。表面近傍において粒内割れと考えられる箇所が確認された。この箇所では、加工により形成されたと考えられる金属組織及び硬さの上昇が見られた。(3)溶接金属端から約3mmの範囲では、溶接の熱影響により表面近傍の硬さが低下していた。(4)結晶粒界の狭い範囲でわずかなCr濃度の低下が認められた。本調査の結果と、き裂付近に発生していたと考えられる溶接引張残留応力及び炉水中の溶存酸素濃度等を考慮すると、このき裂は応力腐食割れ(SCC)であり、材料の硬さと関係があると結論された。
安堂 正巳; 谷川 博康; 實川 資朗; 沢井 友次; 加藤 雄大*; 香山 晃*; 中村 和幸; 竹内 浩
Journal of Nuclear Materials, 307-311(Part1), p.260 - 265, 2002/12
被引用回数:39 パーセンタイル:90.08(Materials Science, Multidisciplinary)核融合炉構造材料の第一候補材である低放射化フェライト鋼の開発において、高エネルギー中性子によって生じる照射損傷が材料特性へ及ぼす影響を明らかにすることは最も重要な課題の一つである。しかし現時点では、材料強度特性変化に対するヘリウムの効果については十分に明らかとなっていない。そこで、照射条件を高精度に模擬できる多重イオンビーム照射法,照射面部分の硬さ変化を精密に測定可能な超微小硬さ試験及び押込み変形部の微細組織観察法を組み合わせ、低放射化フェライト鋼に導入した損傷領域の強度特性変化についての評価を行った。まず弾出し損傷を加えた試片について微小硬さ試験を行った結果、特定の照射温度条件において明瞭な硬化が見られた。この硬化つまり変形抵抗増加の原因は、主として微細な欠陥の生成によるものであり、さらに同時照射下でのヘリウムの存在がその変形抵抗に及ぼす影響について報告を行う。
若井 栄一; 三輪 幸夫; 橋本 直幸*; Robertson, J. P.*; Klueh, R. L.*; 芝 清之; 安彦 兼次*; 古野 茂実*; 實川 資朗
Journal of Nuclear Materials, 307-311(Part.1), p.203 - 211, 2002/12
被引用回数:26 パーセンタイル:82.31(Materials Science, Multidisciplinary)核融合炉構造材や核破砕ターゲット材は高エネルギー粒子との衝突によって弾き出し損傷が生じるだけでなくHやHeなどが生成する。このため本研究ではBを添加したF82H鋼やFeを用いて作製したF82H鋼を用い、中性子照射中にHeやHを生成させてこれらが組織に及ぼす影響を検討した。照射はHFIR炉で2.8から51dpaまで250Cから400Cで行った。250C照射で水素が生成した材料では転位ループの数密度がわずかに増加するとともに、転位ループのバーガースベクトルの3割程度を(1/2)111タイプから100タイプのループに変化した。また、キャビティ形成を助長した。300Cや400C照射でHeが生成した場合、転位ループの数密度はわずかに増加し、キャビティの数密度も増加した。照射温度に依存する微細組織変化の解析から、微細組織と照射硬化または延性脆性遷移温度シフトの間の関係を考察し、照射による延性脆性遷移温度シフトの増加の原因は転位ループ形成による硬化だけに起因しているものではなく、転位ループ上に形成した'析出物にも関係していることを指摘した。
直江 崇*; 二川 正敏; 涌井 隆*; 粉川 広行
日本機械学会関東支部茨城講演会(2002)講演論文集, p.3 - 4, 2002/09
液体重金属による材料の脆化挙動(Liquid Metal Embrittlement;LME)について、微小押し込み試験により評価した。ここでは、液体水銀に対する316ss鋼の接液面における機械的特性の変化を押し込み試験と逆解析を組合せて定量的に評価するとともに、応力の影響について、圧痕法により形成される残留応力分布と特性変化の関係について調べた。水銀浸漬は150Cで最大2000時間行った。浸漬時間とともに表層硬化層厚さが増加し、表層硬化層の延性は均一伸びで約3割程度低下することがわかった。また、このような傾向は圧縮応力場では軽減される。すなわち、浸漬による硬化の程度が小さい。